この空の下
差し出された手は善か悪か

新しい職場

「羽蘭先生、次の患者さんいいですか?」

看護師の多恵さんが声をかける。


「いいですよ。次は・・・」

「酒屋の梅さんです」

ああ。ここのところ毎日来ているおばあさん。


「こんにちは、先生」

「梅さんこんにちは。お加減いかがですか?」

「ええ、いいですよ。先生のお陰です」

満面の笑顔。


80代半ばの梅さん。

血色も悪くないし、ちゃんと1人で歩くこともできる。



「胸の音も綺麗ですね。ただ、梅さんは血圧が高いから、薬は飲んでください」

手早く血圧を確認。

「うちの嫁ったらね」なんて愚痴っている梅さんの横で、薬の指示を出す。



「じゃあ、無理せずに。なるべく動くようにしてくださいね」

「はい、ありがとうございました」

頭を下げて出ていく梅さんを、笑顔で見送った。
< 19 / 405 >

この作品をシェア

pagetop