この空の下
「ねえ」

っと呼ばれて、

「はい」

と顔を上げた。


「隆哉ってさあ、厳しくて冷たい印象があるでしょう?」

「ええ」

まさに非情な鬼って感じ。


「元々はそんな奴じゃなかった。仕事柄そうなってしまったんだ」

「仕事柄?」

「そう。あそこは保守的な街だから、隆哉みたいな若造が大きな施設をいくつも動かそうと思うとそれなりに摩擦が起きる。そんな中でやっていくためには、完璧な跡取りを演じて、冷血に切り捨てていくしかなかったんだと思う」

そうしているうちに隆哉さん自身がそんな人間だと思われるようになった。

なんだかかわいそう。


「隆哉は君のことが好きなんだと思うよ」

「そんな、隆哉さんには彩葉さんがいますから」


「関係ないでしょう。少なくとも、僕の所に怒鳴り込んできた隆哉は君のために怒っていた」


そんなはず・・・ない。
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