この空の下
元々日向ちゃんは、おしゃべり好きな元気な女の子だった。

変わってしまったのは1年前。

お母さんがいなくなってから。

乳癌だった。

見つかったときには手遅れで手術もできず、3ヶ月ほどで亡くなった。

その日から、日向ちゃんはあまり話さなくなった。


「ずっと母親べったりで育ちましたから、仕方がないとは思うんですが・・・」


仕事の忙しいお父さんは実家に日向ちゃんを預けて、週末にだけ会う生活をしていると。



「日向ちゃんは今までの家から引っ越しして、お友達もいなくなって、寂しいのかもしれませんね」

悪意なく言った言葉。

でも、

「私にはこれ以上どうすることもできないんです」

投げやりな感じ。


「すみません。責めているつもりはないんです」

「いえ、こちらこそすみません。分かってはいるんです。でも仕事が忙しくて、どうしようもないんです」

そうだろうと思う。

お父さんは今がバリバリと働く年齢、スローダウンなんて出来ないと思う。



「先生、準備ができました。お願いします」

「はい」
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