この空の下
「待て、羽蘭は俺の女だ」

さすがに空も黙ってはいない。


「残念だな。俺もこいつのことが好きだって気付いたんだ。もう、誰にも渡さない」

私を引き寄せて、意地悪い顔をする隆哉さん。



そのまま私を引っ張りに店を出ようとして、一旦足を止め振り返った。


「いいか、今度こいつに近づいたら麗子さんにもおやじさんにもすべてバラすからな。ただバラすんじゃないぞ、あることないこと尾ひれを付けて言いふらしてやる」

「そんなもん、誰が信じるか」

「やってみろよ。こう見えても俺はあんたと違って好青年で通っているからね、信用では負けない」


空は悔しそうに隆哉さんを睨んでいる。



「行くぞ」

ギュッと握った腕は離されることがなく、

私はなかば引きずられるように、隆哉さんに連れて行かれた。
< 255 / 405 >

この作品をシェア

pagetop