この空の下
「お前さあ、ここに来てから何回『空』って言ったか分かってる?」

「それは・・・」

「それは?」


羽蘭は黙り込んだ。


「いいか、俺の前で元彼のことは言うな。今度、『空はどうだった』なんて言ったら本気でお仕置だからな」

凄みを効かせて言う。


しかし、これで黙ってくれるほど羽蘭も子供ではなく、


「でもね、それって仕方ないことでしょう?お互い初めての相手じゃないんだから。過去はあるわけだし」

「それで?」

「それでって、過去は消せないし、空は空だし。子供じゃないんだから、いちいち文句を言わないのよ」

いかにもお姉さんらしく諭すように言われると、俺の中で何かが切れてしまった。
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