この空の下
「ありがとうございます。少し母と話します」

お礼を言って、私は近くの椅子に腰かけた。



「お母さん久しぶりね」

「はい」

「羽蘭だよ」

「はい」

ただ「はいはい」としか帰ってこない返事。


子供の頃は来る意味なんてないよと思っていた。

「どうせわからないんでしょ」と言っておじさんを困らせた。

さすがに今はそんな気持ちは無い。

病気だと理解しているし、医者として母の病状もわかっている。


でも、娘としてここに来るのはやはり辛い。

5年もの間足が向かなかったのも、忙しかったからだけではない。
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