この空の下
1時間ほど病室で過ごした。


「ありがとうございました」

病室まで案内してくれた看護師に廊下で会い、お礼を言って会釈した。

「お母さんもきっと喜んでいますよ」

「はい。最近は祖父母も高齢になってなかなか来れないんじゃないでしょうか?」

実は気になっていた。

母の面倒任せきりにしていたから。


「そうですね。ご両親もご高齢ですものね。でもご主人が時々みえています」

「父ですか?」

「ええ。ご主人が見えた時は林田さんも嬉しそうなんですよ」


へえ。

知らなかった。


「お世話になりますが、何かあればまたご連絡ください」

今のアパートからは、県境を挟んで車で2時間半の距離。

駆け付けられない距離ではない。

これからはもう少し母と関わっていこう。


いつまでも恨みつらみを言っているわけにはいかないから。
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