この空の下
「どうやら俺も親になるらしくてさ」

「え?麗子さんおめでたなの?」

「ああ、秋には生まれる」

「そう」


空がねえ。

何か想像できないけれど。


「それで気付いたんだ。人にやったことは自分やその子供に返ってくる気がして、まずは謝っておこうと思った」

なるほど。

分からないでもない。



「去年の今頃は、お前と家族になることしか考えてなかったのにな」

「そうね」


私も同じ。

空が運命の人なんだと思っていた。


「あいつに連絡しろよ。お前のことだから、意地を張って自分からはしてないんだろう?」

さすが、よく分かってるじゃない。



「とにかく、すまなかった。あいつにも謝ろうか?」

「いえ、いいわ。帰りたくなったら帰ってくるでしょうし、話しはその時でいい。私のために彼の人生を変えたくないから」

「大きく出たな」

からかうに言われたけれど、半分本気。


私だって、人生決断の時なんだから。
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