この空の下
「私ね、妊娠したの」

「うん」


隆哉はもう知っているはず。

でも、自分の口で言いたかった。


隆哉の手がおなかに当てられた。

「大切にしよう」

「うん」

その手の温かさが、赤ちゃんにも伝わるような気がした。





「彩葉さんは大丈夫なの?」

聞かずにおこうかと思ったけれど、やっぱりできなかった。

「ああ」


隆哉の話によると、もと住んでいたアパートに戻り、かかりつけ医の通院も再開したらしい。

少しずつ食べることもできている。

友達もたくさんいるみたいだし、仕事のオファーもきていてとても順調な様子。

それから、『これ1枚だけだから』と言い訳付でちょっとだけふくよかになった彩葉さんを写真を見せてもらった。

どうか幸せになって欲しい。

心からそう思った。
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