この空の下
今度はポケットをゴソゴソとした隆哉、

「はい」

と小さな箱をテーブルに置いた。


「何?」

「見てごらん」


恐る恐る手にとると・・・これ、へその緒?

どうしたのと、隆哉に視線を向けた。


「お父さんが持ってらした。病気のお母さんには渡せなかったそうだ」

「そう」

そうだったのね。

小さな箱から出てきた干からびたへその緒。


「どんなに抵抗しても、お前がお父さんとお母さんの子供であることは消せない。俺たちも同じなんだよ」

「・・・」

「いい加減諦めろ」

強い言葉なのに穏やかな口調。


そして、スーッと隆哉が席を立った。
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