この空の下
新しい命

過去

秋。
私は大きなお腹を抱えて優子先輩の病院にやって来た。

「あら羽蘭。随分大きくなったわね」
「お陰様で」

「ちゃんと腹帯してるの?」
体格の割に大きくなってしまったお腹に手を当てる優子先輩。

「してますよ。ちゃんとウォーキングもしてるし、体重だって理想的です」
「その割には大きなお腹ね」

フン。
すみませんね。

妊娠7ヶ月を超えた頃から、順調に出てきたお腹。
検診でも不思議そうに見られ続けた。

「おかしいですよね。仕事だって一切セーブしてないし、運動不足でもないのに」
「本当ね」
半分笑いながら、隆哉と優子先輩の会話が続く。


「ハイハイ。妊婦をからかわない。問題は腹囲ではなくてお腹の赤ちゃんのサイズだから」
助け船を出してくれるのは悠平先輩。

「そうですよね。失礼なパパとおばちゃんね」
言いながら、お腹をさする。

「おばちゃんって誰の事よっ」
優子先輩の声が大きくなった。


「ちょっと、病院で大きな声出さない」
ええ?
突然声が掛かり驚いて振り返った。

「桜子先生」

次の瞬間、優子先輩が駆け出した。

「どうしたんですか?妊娠ですか?」

ぷーっ。
私が吹き出してしまった。

呆れたように優子先輩を見て、私に頭を下げる女性。

どうも。
私も会釈した。

綺麗というよりかわいい人。
いくつだろう、40歳位かな?

「こんにちは」

続けて入ってきたもう1人の女性。
今度は凄い美人さん。
年は・・・40代中盤いや、年齢不詳な感じ。

「こんにちは桜井さん」
優子先輩が挨拶すると、

「麗子がお世話になります。これ、お店で出してるケーキとプリンなんです。よかったら召し上がってください」

大きめの袋を差し出す女性。
ニコニコと笑いながら、2人の女性は入院病棟へと消えていった。
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