この空の下
事の発端は10日前。


事件はこの病院ではなく、ホテルのバーで起きた。


珍しく定時で上がった私は、恋人の永澤空(ながさわそら)と飲みに出ていた。


空とは高校時代からの腐れ縁。

医大も同じで、二十歳の頃から付き合いだした。


実習や研修でボロボロになっているときに、いつも明るく笑い飛ばしてくれる空が好きだった。

器の大きい人なんだと思っていた。その時は。

でも、

研修医も終わり一人前の医者となって、空はいい加減で何も気にしていないだけじゃないかと思うようになる。

それでも、私だけではなくみんなに優しい空を嫌いになれなかった。


7年も付き合っていれば、色々なことがある。

浮気されたことも、倦怠期だって数え切れない。

しかし、結局空は私の元に帰ってきた。


時間と思い出を重ねながら、私の中で空は特別な人になっていた。
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