この空の下
「なあ、少し落ち着け。1人で勝手に妄想を膨らませるなって」

なんなんだこの男。

人ごとだと思って、呑気なことを。



ブブブ ブブブ。

隆哉さんに着信。

画面には『理事長』の文字。


「呼んでますよ」

顎で携帯を指しながら言ってやった。



「いいんだ。放っておけ」

はあ?

「あなたはそれでいいかもしれないけれど、私はどうなるのよ。赴任して間がない年上の女医が息子のベットにいるのを見たのよ。このままって事はないでしょう?きっと首になる。私が今の仕事を見つけるまでどれだけ苦労したかなんてあなたみたいなお坊ちゃんには分からないでしょう」

我慢していた言葉が一気に口から出てしまった。


「おい、落ち着け」

肩をポンポンと叩かれた。


何よ、今更優しくしたって遅い。
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