この空の下
「仕事がなくなればまた職探しをしなくてはならないので、困るのは確かです。でも、よく考えたらこの状態で勤務を続ける方が無理だと気付いたんです。私はあなたを信用できません」

「信用できないって・・・」

苦虫を噛みしめたような顔になっている。



「お世話になりました」

再び玄関の方へ向かう。



「借金あるんだろう。仕事が見つからなかったらどうする気?」

先ほどより2トーンくらい低い、冷たい声をかけられた。


え?

「何で?」


「そのくらい普通調べるよ。どこの大学にも属さないフリーの医者なんて怪しいじゃないか。何でフリーになったのかも聞いたし、借金があるのも知っている」


「それが?あなたに何の関係があるんですか?」

「だから、昨日のことは俺にも責任があると思うし、母さんのこともちゃんと話を付けるから辞めるなんて言わないでくれ」

「イヤです」

まるで子供みたいだけれど、許せない。


「じゃあ、せめて次の職場が見つかるまでうちにいてくれ。それならいいだろう?」


まあ。それなら・・・
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