この空の下
2人の女の人がいて、どちらにも「好きだよ」「愛しているよ」と言うのは優しさじゃない。

それは罪。


「結局、わがままで軽薄で、いい加減な男だった。それを見抜けずに7年も騙されていた私も、バカだって事」

「そうかなあ?」

首を傾げる隆哉さん。



「俺は、自分に正直に生きられる彼、空さんだっけ?羨ましいと思うよ」

「どこが?」

人間として最低な男。


「彼も医者なんだろう?きっと頭が悪いわけではないと思う。自分の行動がどう受け取られ、どんな評価を受けるかなんて分かってると思うんだ。でもあえて自分に正直に生きるって、結構凄い人だと思うよ」

「・・・」

返す言葉がない。

「俺の中に彼の何分の一かの勇気があって、正直になれていたら、彩葉を失うことはなかったかもしれないな」

え?

思わず見つめてしまった。


「まあ、過ぎたことだ」


寂しそうに、

悲しそうに、

辛そうに、


隆哉さんがビールを流し込む。
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