この空の下
飲み干した缶をグシャッ潰し、次のビールに手をかけた隆哉さんを、

私は止めた。


「もうやめた方がいいわ」

こんな飲み方は悪酔いする。

今の私が言える立場ではないけれど、悲しい気持ちが倍増するだけ。



ビックリしたように私を見る隆哉さん。

その目が凄く色っぽかった。



2人とも酔っていた。

心の傷がズキズキと痛んでいた。


もちろんそんなことは言い訳でしかない。

でもこの時、少なくとも私達は同じ気持ちだった。



どちらからともなく手を伸ばし、

そのまま抱きしめて・・・唇を重ねた。

お互いの息遣いまでもが流れ込んでくるようなキス。

激しく、荒々しく動く舌。



もう止めることはできなかった。


今は何もかもを忘れたい。


私は目の前の男と悲しみを共感していた。
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