オレンジ色のROMANCE
「貴方名前は?」
「村田です。」
眼鏡をかけ髪を結い上げ黒のスーツを着こなした彼女は、30半ばのベテラン秘書だった。
秘書は、年上に向かって口の聞き方も知らんのか!と心で怒った。
「お前がよこれんぼした彼女は、
元気か?」
「よせよ。随分昔のはなしだろ、」
「お前も随分酷いやつだと
仲間と話したもんだ。」
「若かったんだよ。」
「嘘つけ‼60だったろう。
善し悪しの区別はつく歳だぞ。
勿論養育費は、払ったんだろ‼」
「勿論そのつもりだったが
父親も再婚したようで
祖父母に養育費の申し出をしたら
いらないとなげかえされたよ。ハハハ」
「何笑ってんだよ。
俺は小さな子がいると聞いて
拓成連れて見にいったんだ
可哀想に玄関に一人すわってたよ。
きっと母親をまつてたんだろう
よ。」
「まあ..な、それはそうかもしれん。
小さかったと聞いていたからな‼」
「あれから何回かあの家の前を通ったが木の影で泣いていたり
家の入り口で泣いていたり
拓成も気にしていた。」
「お前はホントに酷い奴だと思ったゾ
‼みんな言ってたぞ.・・・
お前の結婚相手見て、年が離れ
すぎてて、
娘かっ‼ってな。」
「アハハハそうか?」
「気にならんのか
家庭を壊して‼」
「・・・もうやめよう。
掘り返しても何にもならない。」
「今更だろう。
昔の話だ、」
山本はバツが悪そうに苦笑いを
した。
「あ‼お茶をたのむよ。
こいつにはコーヒーをブラックで
わたしは日本茶で。」
康成は秘書が、話の腰をおらぬ様
気を使っているのを感じて
お茶を頼んだ。
秘書は、慎重な顔をして
「わかりました。
お持ちします。」
と言いながら出て行った。
ドタバタと足音がひびき息子の直臣(たっおみ)が、駆けこんできた。
康成に耳打ちすると
康成は、ハッとした顔をして山本巧を見て 言った。
「山ちゃん悪いがこの話は
無かった事にしてくれ
拓成には、彼女がいるようだ。」
「えー‼そりゃないだろう。
娘は、スッカリその気なんだ‼
金でどうにかならんか?」
「いやいや山ちゃん
孫の人生まで介入したくはない‼
悪いが諦めてくれ。」