【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 顔を後ろに動かしてみると、彼は私の顔のすぐ横でのぞき込んでいた。

 めちゃくちゃ顔が近くて困惑する。

 いちいち心臓が跳ねてしまい、顔がかぁっと赤くなる。

 そんな私の様子に気がつかないのか、柊吾さんは柔らかい表情のまま腕を伸ばす。

「皿はここに入っている」

 柊吾さんは作業台の引き出しを開けた。シンプルな白いお皿がひと通り二枚ずつあるくらいだった。

 料理はほとんどしないと言っていたから、急いで揃えたものなのかも。

 柊吾さんは二枚のお皿を出してガス台の横に置き、隣のコーヒーメーカーに粉と水をセットしている。

 その間に、目玉焼きを焼くことに集中する。

 彼は私のために牛乳を電子レンジで温めてくれた。

 明日からは自分ですべてできるようにしなきゃね。

 いちおう妻なんだから。


 語学学校の教室へ入ると、アリッサとベラが歓喜の声をあげて近づいてきた。

「ハル!」

 ふたりは私をギュッと抱きしめて歓迎してくれる。相変わらずキラキラして元気いっぱいのふたりだ。

「帰ってこられたのね。思ったより早かったじゃない」

 腕はそのままに密着していた身体を離し、アリッサは私の顔をじっと見て青い瞳を細めてにっこり笑う。

「うん。ふたりに会いたかった!」

 喜んでくれるふたりにもう一度ハグをした、そのとき――。

「ちょ、ちょっと! これはなにっ?」

 アリッサの腰に回した私の左手がベラに掴まれ、持ち上げられる。

 
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