【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 ふと斜め前に座るジュリアンへ視線を向けた瞬間に目が合う。ずっと見られていたみたいだ。

 彼の射抜くような瞳に、当惑して口をすぼめる。目線を手元に落として、もうひと口オレンジジュースを飲んだ。

 キッチンへ行っていた梨沙とポーリンがラタトゥイユのお皿を持って戻ってきた。

 梨沙のラタトゥイユは具だくさんで、ローズマリーの風味がする、私が好きな一品でもある。

 ほうれん草とベーコンのキッシュやカキのコンフィ、鴨肉のカシスソースなどおしゃれな料理をたくさん振る舞ってくれた。

 デザートはオレンジ風味のスフレで、口の中で溶けていく食感に私は頬を緩ませた。

 柊吾さんも終始美味しいと梨沙の腕を絶賛していた。

 オーリィ氏は柊吾さんをいたく気に入って、彼の趣味が美術鑑賞だと聞くと、さらに上機嫌になった。食事後は自分のコレクションを観てもらいたいと柊吾さんを書斎に招き、私は梨沙の片づけを手伝った。

 ポーリンも食器を運んでいるが、ジュリアンは自分の部屋へ行ってしまっていた。

「梨沙、美味しいお料理をありがとう。柊吾さんも喜んでいました」
「気に入ってくれてよかったわ。政略結婚だって聞いていたから、相手はどんな人なのか心配だってけれど、シュウゴさんなら安心だわ」

 食洗器に汚れた食器を丁寧に入れながら、梨沙は私のほうへ顔を向けて微笑む。



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