【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ～御曹司と溺甘な政略結婚～
「慣れないんだから、そんなことはよくあることよ」

　梨沙は私の慌てている姿を想像しているのか、笑いながら慰めてくれる。

「ハル、ここはいいから、お部屋の荷物の整理をしてきたら？」

　キッチンの片づけは梨沙とポーリンに任せて、私は借りていた部屋へ向かった。

　そこは日本へ発ったときのままだった。

　あれからもう二週間も経ったなんて信じられない……。

　クローゼットからふたつの大きなスーツケースを出して床に広げる。服などをどんどんスーツケースの中へ入れて、ひとつが満杯になったところでドアがノックされた。

「はーい。どうぞ」

　梨沙かポーリンかと思い声をかけると、戸口に姿を見せたのはジュリアンだった。

　いつもならその場でとどまり部屋の中へ入ってこないが、今は違った。

　驚いているうちにあっという間に私の目の前に立ったのだ。

「やつと結婚して幸せなのかよ。あんなおじさんで、ハルは楽しいのかよ」

　ジュリアンは顔を赤らませて、私の両腕を強く掴んだ。そんな乱暴な掴み方を今まで彼はしたことがなく、驚きを隠せない。

「ジュリアン、放して。どうして怒っているの？」

　その理由はなんとなくわかっている。でもこの場をやり過ごしたくて、なんでもない風を装って聞いた。

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