【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ～御曹司と溺甘な政略結婚～

「どうして怒っているかって？　俺の気持ちはずっとはぐらかされていたのはわかっていたよ。でも、好きな人が突然結婚してどんな気持ちでいるのかわからないの？」

　ジュリアンは熱を帯びた瞳で熱く見下ろし、グイッと顔を近づけてくる。

「放して！」

　決して大きな声ではなく、ジュリアンに聞こえる程度の怒りを込めた声色で私は言った。

　彼の手を振りほどこうと身体を動かすが、さらにきつく掴まれる。

「くそっ、なんでわからないんだよ！」

　そのとき――。

「放してもらおうか」

　柊吾さん声が、この雰囲気を切り裂くように鋭く響いた。私の動きが止まり、ドアのほうへ視線を向ける。

　柊吾さんは後ろ手にドアを閉め、私たちのほうへ大股で歩いてきた。ジュリアンは目を見開き、近づいてくる彼を茫然と見ている。

　柊吾さんがジュリアンの隣に立った。身長は十センチほど柊吾さんが高く、並んだ姿はいきがっている子供と自信を秘めた大人の男性の差がある。

「彼女は俺の妻だ。手を退けてくれ」

　冷たい声は、いかに彼が冷静であるかをジュリアンに知らしめているようだった。

　ジュリアンは仕方なく私の腕を解放した。

「数カ月間あったのに君の思いは心春には届かなかったのだろう？　心春は君のことを弟のようにしか思っていない」

　柊吾さんは下唇を噛みしめているジュリアンに言い放つ。