【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「ジュリアン、ごめんなさい。突然だったからびっくりしたんだよね」

 彼は一瞬、泣きそうな顔をした。そしてなにも言わずに踵(きびす)を返し、部屋を出ていった。

 ジュリアンの姿が見えなくなったことにホッと安堵し、足の力が抜けてへなへなとその場に座り込みそうになった。そんな私を柊吾さんは支えて抱き上げた。

「柊吾さんっ」

 お姫さま抱っこされた私はすぐにベッドの上に座らされた。

「俺が荷物をまとめるからそこで休んでいるんだ」

 今まで懐いてくれていたジュリアンが急に別人になったみたいで怖かった。そのせいで手足が今になって震えてきている。柊吾さんにはそれがわかったのだろう。

 残りはドレッサーの化粧品や小物だけだ。柊吾さんは私に聞きながらテキパキとスーツケースの中に入れていった。

 それから五分ほどで、部屋に置いていた私の荷物はスーツケースふたつに収まった。

 ベッドから降りると、足に力が入らず身体がふらついた。

 柊吾さんの腕が肩を抱えてくれる。

 そのときドアがノックされ、ポーリンが顔を覗かせる。

「お邪魔してごめんなさい。ママンがお茶を飲みましょうって」

 私たちの姿を見てラブシーンでも想像したのか、頬を赤らめたポーリンだ。

「あ……これから……用事があるから、帰りますって、言ってくれる?」

 いつものようにスラスラと言葉が出なくて、さらにポーリンの想像をかき立ててしまいそうだ。

「わかったわ! ハル、抹茶のサブレ美味しかった! 我慢できなくてひとつ食べちゃったの。ありがとう」

 日本からのお土産のお菓子をポーリンは気に入ってくれたようで、私は笑みを浮かべた。

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