【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 柊吾さんの腕の中にいる私は、荒い息をなんとか落ち着かせようと呼吸を整えていた。

 心臓がバクバクと早鐘を打ち、身体のいたるところが敏感になっているようだ。

 柊吾さんが呼吸で上下する肩にチュッと音を立てて口づける。

「大丈夫か?」

 彼の息も少し乱れている。それがなんだか嬉しい。

 返事の代わりに私は首を伸ばして、柊吾さんの顎にキスをする。溶け合うようなキスをたっぷりしたせいで、恥じらいは遠く彼方へ吹き飛んでしまった。

 もっとキスをしたい。もっと柊吾さんに触れてほしい。その思いが私を大胆にさせる。

「柊吾さん、たくさんキスして」

 今まででは信じられない言葉だ。こんな風に思いを素直に言えるなんてことはなかった。

 柊吾さんになら素直になって甘えたい。

「たくさんキスをしたら、また心春を襲ってしまいそうだ」

 初体験の痛い話は友人から何度も聞いている。耐え難い痛みがあると。

 でも、私はそうじゃなかった。たしかに痛みはあったけれど、それ以上の恍惚(こうこつ)感に理性が吹き飛んだ。

「もっと襲ってほしいって言ったら?」

 柊吾さんはクッと喉の奥を鳴らした。

「悪い子だ。年寄りを誘惑するとは」

 私はピクッと肩を跳ねさせて上体を起こした。

「柊吾さんっ! そんなこと言わないで! 年寄りじゃないんだからっ」

 柊吾さんは着やせするタイプなのか、綺麗に筋肉がついたダビデ像のような身体をしている。こんな完璧な男性が自分の夫なのだ。

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