【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「食事が済んだら、美術館にでも行くか?」
「あ、でもベッドを見に行かなきゃ」

 そう言うと、柊吾さんは眉根をキュッと寄せ、これ見よがしな大きなため息をつく。

「心春、本気でそれを言っている?」
「え……? だって……」
「だってじゃないだろう。もう心春と離れて眠れるわけがない。毎晩毎朝、愛し合いたいし、一緒にいたい。手の届くところにいてほしい」

 突然の赤面ものの会話に私はビクッと背筋を正して、テラス席へ視線をキョキョロと向けた。

「も、もうっ! 外でそんなことを言わないでっ」

 日本人がいなくてよかったと胸を撫(な)で下ろす。こんな会話を聞かれたら恥ずかしすぎる。

「本当のことだ。愛している。今すぐキ――」

 ドギマギしながら止めようと、慌てて片手を柊吾さんの口に伸ばした。その手が掴まれて彼のほうへ引き寄せられる。

 柊吾さんは顔を傾けて、食(は)むように唇にキスをしてから離れた。

「柊吾さんっ!!」

 頬が急激に熱を帯びていく。

「ここは恋人たちの街だぞ? 誰も俺たちのことなんて見ていないさ」

 柊吾さんの微笑みに心臓がドキッと跳ねる。

「そんなことないです。オルセー美術館内で会ったとき、日本人の女の子たちが『あの人カッコいい』って言っているのが聞こえて、見たら柊吾さんでしたもん」

< 141 / 250 >

この作品をシェア

pagetop