【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「へえ。俺はカッコいいって言われた?」
「えっ? 自覚ないんですかっ?」

 私は驚いて目をまん丸くさせた。

「たしかに女性は寄ってくるが」
「自慢しないでっ」

 やっぱり自覚があるんじゃないのっ。

 私は乱暴にクロワッサンをちぎり、カフェオレにつけずに口へ運んだ。

 そんな私に柊吾さんは笑い声をあげた。


 その後、手を繋いでゆっくりパリの街を歩き、市立近代美術館へ行った。

 ここにはマティスやピカソなどの有名な絵画が展示されている。

 時間をかけて鑑賞し、外へ出てまたカフェに入る。そんな休日が楽しくて仕方がない。

 いつもはひとりか、どうしても一緒に行くと言ってきかない美術嫌いのジュリアンと出かけていたけれど、柊吾さんとの時間は幸せで満ち足りたものだった。

 いつの間にか私は柊吾さんを愛していた。

 結婚してから、柊吾さんと一緒にいて感じるようになったモヤモヤの原因がわかった。

 柊吾さんに愛されたかったのだと。

 十六時を過ぎたところで、パリっ子に人気のあるうどんのお店に入った。

 具がたっぷりのけんちんうどんに天ぷらの五種盛りがあっという間に胃の中へ入っていく。

「近いうちにローマへ行こうか」
「行ってみたい! ローマには美術館がたくさんあるよね? ヴァチカンの中の美術館もずっと気になっていたの」
「ああ。心春は絶対に楽しめる」

 両手を合わせて喜ぶ私に、柊吾さんも笑顔で頷いた。

< 142 / 250 >

この作品をシェア

pagetop