【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「きゃっ!」
「キスして」

 からかう瞳で見つめてくる柊吾さんの鼻先にチュッとキスをする。

「それで満足すると思ってるのか?」
「じ、時間がっ」

 クルッと身体が反転して、柊吾さんが私の頭の脇に手を置いた。

「キスで遅刻にならないさ」

 柊吾さんはジリッと距離を詰めて嫣然(えんぜん)と笑うと、唇をしっとり重ねた。



 パリのシャルルドゴール空港から、ローマのフィウミチーノ空港まで二時間十分のフライト。
 
 シャルルドゴール空港の売店で買った日本語のガイドブックでローマに思いを馳(は)せている間に到着した。
 
 ローマはパリよりも気温が平均六度くらい高いが、冬を迎える今、寒いことには変わりない。
 
 私は赤いダウンジャケットにデニムという格好。
 
 柊吾さんも私に合わせて、モスグリーンのダウンジャケットにブラックデニム。
 
 ブラックデニムは足の長さを際立たせており、立っているだけで絵になるほどカッコいい。
 
 柊吾さんはローマを何度も訪れており、手配した車の乗り場までなにも見ずに私を案内する。

「心春、迎えの車があそこで待っている」

 空港のドアを抜けた柊吾さんは一泊分の衣類が入ったバッグを片手に持ち、もう片方で私の手を繋ぎ、歩を進める。

 柊吾さんの案内のもと、道路の端に停まる黒塗りの高級外車へ向かう。

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