【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 私はガイドブックでコインの投げ方を読んでいた。諸説あるようだけど、コインの枚数で叶うことが違い、一枚は〝またローマへ戻ってこられる〟。二枚は〝好きな人とずっと一緒にいられる〟。三枚は〝今の恋人や夫と別れることができる〟。

 三枚なんて絶対にあり得ない。

「心春、コインをあげるよ」

 私はにっこり笑って首を左右に振る。

「大丈夫! ユーロ持ってきているから」

 フランスもイタリアも通貨はユーロ。もらったお金よりも自分のお金のほうが、効果がある気がした。

 私はポケットからコインを二枚取り出した。

「柊吾さんも二枚投げてくれる?」
「二枚?」

 首を傾けて尋ねる彼に、私は大きく頷く。

「そう。絶対に二枚だからねっ」

 そう言うと、私はトレビの泉に背を向けて二枚のコインを放った。

 続いて柊吾さんも後ろ手で泉にコインを投げた。だけど、それが私には一枚に見えた。

「柊吾さん、もしかして投げたコインって二枚じゃなかった……?」

「一枚も二枚も同じだろう?」
「そんなぁ……」

 私はがっかりして涙目になってきた。そんな私に柊吾さんはクッと喉の奥で笑う。

「柊吾さんっ! 笑い事じゃないんだからぁ」
「なるほど。心春は俺と別れたくないと思ってくれているんだ」

 彼の言葉に耳を疑いキョトンとなる。

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