【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「え……っと、どうしよう……」
「じゃあ、箱根までドライブしようか」
「箱根! 行きたい! 美術館があったよね?」
「まあいろいろあるな。初ドライブだな。準備して」

 私は白いニットワンピースと赤いダウンジャケットに着替えて、リビングで待っている柊吾さんのもとへ行った。

 柊吾さんは黒のスリムなデニムに白いニット、手に黒のダウンジャケットを持っていた。

 私が白のニットワンピースを選んだのは、今朝から柊吾さんが着ていたニットに合わせたからだ。ちなみに黒いロングブーツを履いて、足元も彼に合わせるつもり。

 出発したのは九時過ぎ。土曜日ということもあり道路は混んでいて、箱根に到着したときには十二時近くになっていた。

 東京よりこっちのほうが、ひんやりと冷蔵庫の中にいるみたいに寒い。

 柊吾さんの知っている旅館でお豆腐の懐石料理を食べてから、モネやルノアールなどが展示されている美術館を鑑賞し、気づけば二時間近く経っていた。

 美術館の外へ出たとき、空から雪がふわふわ舞っていた。

「柊吾さんっ、雪!」

 フランス語で話すという約束をすっかり忘れ、日本語で喜ぶ私に柊吾さんは顔をほころばせる。

「心春、フランス語で雪は?」
「ぁ……」

 忘れている私に柊吾さんは「ネージュ」と教えてくれる。

「そうだったわ! ネージュ!」

 両手をパンと叩いて大きく頷く。


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