【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「ドラローシュの絵画か」
「それだけじゃないの。西洋文化史に精通している著名な人が解説していておもしろそう」
「たしかに、絵画と両方とも楽しめそうだ。俺も読んでみたい。会計しよう」

 柊吾さんは私が持っていた書籍を取り上げて、自分の二冊に重ねるとレジへ向かう。

 レジ近くの雑誌コーナーで赤ちゃん雑誌が目に入り、私は思わず柊吾さんのダウンジャケットの裾を引っ張る。

「買い忘れたものでもあるのかい?」
「ううん。柊吾さん、私、赤ちゃんがほしい」

 お義母さまに言われたからというのも否めないけど、私自身、柊吾さんの赤ちゃんが欲しくなっていた。

 柊吾さんは切れ長な目を大きくして驚いている。

「心春? 急にどうしたんだ?」
「急じゃないの。前から考えていたの。受験に失敗したら、赤ちゃんが欲しいって」

 こんなところでする会話ではないけど、赤ちゃん雑誌が目に入ったら柊吾さんを引き留めてしまっていた。

「柊吾さんは欲しくないの?」
「心春、この話は家でしよう」

 優しく諭すような口調だったけれど、柊吾さんの気持ちは読み取れなかった。

 家でちゃんと話せるときに切り出せばよかった……。


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