【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 画廊は六階建てで一、二階が画廊、三階から事務所になっている。全国に展開する画廊の事務関係はすべてこの本店で担っている。

 一階の画廊に足を踏み入れると、スーツを着た受付の女性がイスから立ち上がった。

 三十代前半の藤原(ふじわら)さんは私が中学一年の頃からこの画廊で働いているので、よく知っている。

「お嬢さま、いらっしゃいませ。遅くなりましたが、ご結婚おめでとうございます」
「藤原さん、こんにちは。お久しぶりです」
「見ない間に、とても綺麗になられて。今日お見えになられると聞いて楽しみにしていたんですよ」

 藤原さんは嬉しそうな笑みを浮かべ、並んで奥のエレベーターに足を運ぶ。

「どうぞ。社長がお待ちかねです」
「ありがとうございます」

 藤原さんは六階のボタンを押してから外に出て、閉まるまで見送ってくれた。

 画廊に来るのは留学してからは初めてで、約一年ぶりだった。

 六階へ到着すると廊下を進み、一番奥の社長室のドアをノックした。

「心春」

 すぐに中からドアが開き、お父さんが立っていた。

 いつもなら秘書の田口さんがいるのに、今日は見当たらない。

「田口さんは?」
「外出をしている。中へ入って座りなさい」

 私は中央の茶色の革のソファに腰を下ろした。お父さんは斜め前のひとり掛けソファに座り、サイドテーブルにあるインターコムを押して飲み物を頼む。


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