【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「大学は残念だったな」
「うん。勉強が足りなかったみたい」
「勉強もいいが、柊吾くんを支えてあげなさい。社長になって目も回るほど忙しいだろう。身体にも気をつけてあげるんだ」

 お父さんは内助の功も必要だと口にする。

「はい。ところで頼みって……?」
「そんなことを言ってなんだが、パリへ行って画家に会ってほしいんだ」
「えっ? パリへ?」

 私は目を丸くした。

 そこへ女性社員がコーヒーを運んできた。私のコーヒーはミルクがたっぷりだ。

 女性社員が出ていき、お父さんは口を開く。

「パリに住む女流画家から数点買わせてもらうんだが、契約は書面だけではなく、会って直接したいと言うんだ。作品は自分の子供のようなものだから、しかるべき契約ができるか心配をしているそうだ」
「田口さんは?」

 いつもなら田口さんが行くはずだった。

「一週間以内に来てくれと言われているのだが、私はロシアへ明後日から行く。もちろん田口くんもな。心春なら多少なりともフランス語ができる。パリの道も困ることなく移動できるだろう。うちの社員よりもお前が適任だと思ってな」
「たしかにそうだけど……」

 パリと聞いて、住んでいたのは遠い昔のように思ってしまった。ビジネスを知らない私がそんな大役を任されて大丈夫なのだろうか。


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