【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「柊吾さんに相談しないと。今日中に返事をするね」
「ああ。聞いてみてくれ。カフェオレが冷める。飲みなさい」

 私はカフェオレのカップに口をつける。

「どうだ、パリから戻ってきたら週に数日私を手伝ってくれないか?」
「お父さん、さっき柊吾くんを支えてあげなさいって言ったばかりなのに」

 そう言うと、お父さんは頭に手をやり苦笑いをする。

「柊吾くんが仕事中の数時間ならいいのではと思ってな。パリ行きは申し訳ないが。ハウスキーパーもいることだし、パートくらいなら都合がつくんじゃないか?」

 結婚する前は、いずれこの画廊で働くつもりだった。お父さんが困っているのなら手伝いたいという思いはある。

 だけど今の自分の状況を考えるとすぐには返事ができず、私はカフェオレを半分ほど飲んで画廊をあとにした。


 柊吾さんに連絡をしてみると、ランチを用意するから会社へ来ないかと誘われ、私はタクシーで八神物産へ向かった。

 ビジネスの中心地と言われる丸の内にある、三十五階建ての社屋の車寄せにタクシーが停まる。
 
 腕時計を見ると、十二時五分だった。
 
 会社というところに縁のない私には、足を踏み入れること自体ハードルが高く胸がドキドキしてきた。
 
 タクシーを降りたところで、ガラス張りのドアの向こうから辻野さんが近づいてくるのが見えた。

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