【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「辻野さん、先日はすみませんでした」
「お気になさらないでください。お付き合いの期間がないまま結婚されて、まだ社長のことを知らない部分もあるでしょうし、不安ですよね」

 不安……うん。その言葉が当たっている。

 それに正巳さんがどういうつもりで私に話したのかが不可解だった。

「弟の正巳さんはご存じですか?」
「はい。どうかしましたか?」
「正巳さんが、おふたりが愛し合っていると……」

 こんな話をしてしまっていいのか躊躇したけど、血は繋がらないまでも弟なのにおかしい気がした。

「実は正巳さんはお兄さまが社長になったことをよく思っていないんです。血は繋がらないとはいえ、八神家の御曹司なので、以前から対抗意識をお持ちの方です。家庭に荒波を立てて仕事に影響させたかったのかもしれません」

 正巳さんは柊吾さんに対抗意識があったのだと、辻野さんの言葉に内心驚きながら頷く。

 そこでエレベーターは三十五階に到着した。

「奥さま、正巳さんの話は聞き流すのがいいかと思います」

 私は辻野さんの言葉にコクッと頷いた。

 社長室へ続く廊下の両サイドにはドアがたくさんあった。

 こんなすごい会社の社長なんだね。ものすごい数の社員、そしてその家族たち、柊吾さんは彼らの生活という重責を担っているんだ。

 愛情はもちろんのこと、柊吾さんに尊敬の念が強く芽生えた。

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