【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 結婚しないにしろ、お見合いをすっぽかすとか、ひどい態度をしてぶち壊すなんてできない。

「……明日ホテルで会うの」

 考えると憂鬱になって、重いため息が漏れる。

《明日かぁ。帰国後すぐにお見合いだなんて時間を無駄にしないね。また教えて。家出をするなら手伝うよ》

「ありがとう。また連絡する。じゃあね」

 私は真悠に約束して通話を切った。


 翌日、私はお見合い会場である五つ星ホテルのサロンで髪を結い、振袖を着付けられていた。

 まだ十八歳で成人式の振袖は用意していなかったから急遽用意したようだ。

 お母さんの実家の呉服屋で伯父が見立ててくれた。とても豪華で値の張るものだろう。

「心春、とーっても綺麗よ。いつの間にか大人になっちゃったのね」

 帯を結ばれながら、少し離れた場所でイスに座っているお母さんがハンカチを目に当てているのが鏡越しに見える。

 まだ大人になんてなってないっ。成人になるのはまだまだ先なんだから。

 お母さんは水色の訪問着を着ている。呉服屋の娘なので、着付けはお手のもので、自宅で済ませていた。

 朝から髪を結い、振袖を着せられ、早くも精神的にも肉体的にも疲れてきている私はあえて口を閉ざしていた。

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