【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「兄さんの目は確かだわ。高いだけあるわね」

 正絹の振袖はおとなしめのクリーム色。菊・松・梅・竹・笹・もみじなど、さまざまな草花がちりばめられていて、首元を飾る半襟は赤地に鶴と梅の入った明るい色。

 帯も華やかな赤、オレンジ、藤色などが入り、クリーム色の生地を引き立たせている。

 伯父さんのセンスがいいことは認める。私の好みの振袖。でも、だからって嬉しいわけでもない。

 こんなにお腹を締めつけたら、料理が入らないと思うし……。

「お嬢さまの御髪が艶やかな黒髪なので、振袖がよく似合いますこと」
 
 サロンの主任だという年配の女性スタッフが、助手と共に私の帯を結びながら口を開いた。
 
 結い上げた髪には、白と赤の梅の形のつまみ細工の髪飾りをつけており、藤下がりが頭を動かすたびに揺れるのがわかる。

「一度も染めさせたことがない、自慢の黒髪ですのよ」

 私の髪を褒められて、よそ行きの声色で得意げに話すお母さん。

「そうでしたか。一度も染めたことがないなんて、今どき珍しいですわね」

 年配の女性スタッフは笑みを浮かべる。

「心春、綺麗よ~ 八神さんが見たらひと目ぼれしちゃうわね」

 想像したら冗談でも気持ち悪い。

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