【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 でもその人は私を見ても顔色ひとつ変えず、私の両親と話し始める。

 もしかして私がわからない? 日本で会うなんて思わないし、ここは知らないフリをしよう。

「心春、挨拶しなさい」

 お父さんは考えを巡らしている私を呼ぶ。

 入口を少し入ったところで立ち止まっていた私は両親の横へ行き並ぶ。

「八神さん、娘の心春です。まだまだなにもわからない娘ですが、どうぞご指導のほどよろしくお願いします」

 お父さんが紹介を済ませて、挨拶するようにとちらりと私へ視線を動かす。

「……藤井心春です。はじめまして。よろしくお願いします」

 心の入っていない棒読みのような言い方で挨拶した。

「八神です。妻の和江(かずえ)。長男の――」
「柊吾です。心春さん、よろしくお願いします」

 父親の言葉を遮り自己紹介する彼は、パリで会ったときとは別人ではないかと思うほど優しい笑顔だった。

「座りましょう」

 八神氏が口にして、一同が腰を下ろした。

 大きな座卓には窓側から八神氏、あのイケメン、奥さま。反対側の窓側からお父さん、私、お母さんが座った。

 そこへ女将と、女性スタッフがお手拭きと飲み物を運んでくる。

 乾杯は私を除き、全員がビール。私はウーロン茶。

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