【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ～御曹司と溺甘な政略結婚～

　すぐに先付けが出されて目の前に並ぶ。豆腐やレンコン、ゆり根などを使った旬の野菜が、美しい小鉢に盛り付けられている。

「いただきながら話をしましょう」
「そうですね。とても美味しそうだ」

　八神氏の言葉にお父さんは相槌を打ち、皆が食べ始めるも、私は目の前の男性をじっと見てしまっていた。

　本当に私がわからないのかなぁ……。話した時間はほんの数分。女の子の顔なんてみんな一緒に見えるのかもしれないし……。

「心春？　柊吾さんに見惚れているのかしら？」

　考え込んでいると、お母さんの声が聞こえてきた。

「えっ!?」

　ハッと我に返り、右隣のお母さんへ顔を向けると満面の笑みが返ってくる。

　小首を傾げる私に今度はお父さんが口を開く。

「柊吾君があまりにも素敵なので、娘が驚いているようです」

　私がうっとりと見つめていたと誤解されているようで、私は思いっきり頭を左右に振る。

　かんざしの藤下りがシャラシャラと音を立てた。

「ええっ!?　ち、違くてっ、ちょっと考え事をしていただけで……」

　自分がなにを言っているのかわからなくなるほどテンパってしまい、顔に熱が集まってくる。

　そんな私を八神氏は楽しそうに笑う。