【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
やっぱり私を覚えていたのねっ。

 私は八神さんを睨んでから、フランス語で返す。

「わかりました。私もお話があります」

 フランス語で話し始めた私たちを双方の両親は不思議そうに見ている。

「柊吾くんはフランス語が堪能ですね。さすがパリ支社の支社長だけのことはある」

 お父さんはフランス語が話せない。美術品の交渉などは秘書の田口さんが通訳を兼ねている。それでも八神さんが流暢だということはわかるみたい。

 でも、彼がフランス語で話しかけてきたってことは、向こうで会ったことを知られたくないのかな。

 そんな風に思っていると目が合い、八神さんが口角を上げた。

 美形だから、笑みを浮かべるだけで私の心臓はドキッと音を立てるけれど、それは反射的な反応なだけ。

「なんとおっしゃったのかしら?」

 お母さんは私たちの会話の内容が気になるようで、首を傾げて彼に聞く。

「食事のあと、お茶にお誘いしたんです」

 八神さんは簡単に説明をする。

「それがいい。ふたりで話をすればお互いのことがよく知れる」

 八神氏は満足げに賛成し、上機嫌でビールを飲む。


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