【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 食べ方は綺麗で、育ちのよさが伺える。唇は少し薄めで、食べる姿でさえ、色気がある。

 やっぱり恋人はいるに違いないわ。

 話とはそのことなのではないかと推測する。

 帯が苦しくて少しずつ食べながら、八神さんをいつの間にか観察していた。

 両親たちは会話が弾み、あと二年間八神さんはパリの支社長を続けるので、私は語学と美術の勉強ができると話している。

 結婚式は日本へ戻ってからで、先に籍だけ入れて、パリで新婚生活を送るのがいいなどと話しているのを、私はまるで他人事のように聞いていた。

 十三歳離れていると聞いていたからどんなおじさんかと思ったけど、彼なら誰とでもすぐに結婚できるはず。

 その後もホテル自慢の料理が次々と出され、帯で苦しいのが残念だった。

 両親たちは話が盛り上がっていて、私は会話に口を挟むことなく食べているか相槌を打っているか。

 最後の水菓子、メロンと水ようかんが出され、食事は終わった。

「心春さん、外に出ましょう。振袖では暑いし大変だ。着替えた方がいい」
「それがいいわ。室内は冷房が効いていたけど、外はまだ暑いものね」

 八神さんの言葉に彼のお母さまがそう言って私に微笑む。


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