【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
彼がそう言うのも無理はない。数人がお茶をしているが、カップの音のカチャカチャという音以外はシーンと静まり返っている。これで話をしたら聞こえてしまう。
「……やめておきます」
「車を待たせている。行こう」
そうだ。八神さんはビールを飲んでいたから車の運転はできない。
八神さんのあとをついていくと、彼は急に立ち止まった。突然のことで、私は止まれずに、彼の背中に顔をしたたかに打つ。
「いったぁ……急に立ち止まらないでくださいっ」
鼻を擦りながら、涙目で文句を言う。
「すまない」
笑いを含んだ声で謝られても、腹立たしいだけなんですけど。
ムッとなっていると、擦っていた私の手が鼻から退かされ、じっと黒い瞳で見られる。
ふいに八神さんの指先が私の鼻にそっと触れ、心臓がドクッと跳ねた。
「赤くなっているが、鼻血は出ていないな」
「も、もう大丈夫です。行きましょう」
「隣を歩いて」
仕方なく八神さんの隣に並んで歩く。
「あの車だ」
エントランスのガラス扉の向こうに、車寄せに停車している黒塗りの高級外車が見えた。
ガラスの扉がホテルのドアマンに開けられる。そこを抜けると、八神さんが私の手を握った。
「……やめておきます」
「車を待たせている。行こう」
そうだ。八神さんはビールを飲んでいたから車の運転はできない。
八神さんのあとをついていくと、彼は急に立ち止まった。突然のことで、私は止まれずに、彼の背中に顔をしたたかに打つ。
「いったぁ……急に立ち止まらないでくださいっ」
鼻を擦りながら、涙目で文句を言う。
「すまない」
笑いを含んだ声で謝られても、腹立たしいだけなんですけど。
ムッとなっていると、擦っていた私の手が鼻から退かされ、じっと黒い瞳で見られる。
ふいに八神さんの指先が私の鼻にそっと触れ、心臓がドクッと跳ねた。
「赤くなっているが、鼻血は出ていないな」
「も、もう大丈夫です。行きましょう」
「隣を歩いて」
仕方なく八神さんの隣に並んで歩く。
「あの車だ」
エントランスのガラス扉の向こうに、車寄せに停車している黒塗りの高級外車が見えた。
ガラスの扉がホテルのドアマンに開けられる。そこを抜けると、八神さんが私の手を握った。