【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 くっきり二重の大きな目、大きすぎない唇。これで鼻がスッと高ければ、美人の部類に入るのだと思うけれど、残念ながらそうじゃない。
 
 軽くメイクをして、黄色のTシャツとデニムというカジュアルな服の上から真っ赤なチェーンバッグを斜め掛けし、紺色のジャケットを羽織った。

 そしてポケットに真悠へ送るポストカードを入れる。
 
 ジャケットの下にバッグを入れるのはスリ対策だ。パリはスリが多く油断がならない。
 
 鏡を見ながらこげ茶のスカラハットをかぶり、出かける支度が終わった。
 
 部屋を出てキッチンへ向かうと、梨沙が片づけをしていた。

「ハル、もう出かけるの? ジュリアンは渋々出かけていったわ」

 梨沙はキッチン台を拭く手を止めて、やれやれといった風に苦笑いを浮かべる。

「はい。オルセー美術館へ行ってきます」
「ハルはすっかりパリジェンヌね。なにげない装いでもとても素敵よ」

 梨沙に褒められた私は照れた笑顔になる。

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