海の底にある夢【完】


「よし、エアリウルも揃ったな。この罪人に止めを刺すのはやっぱり一番可愛がっていた娘がいねえと始まらねえ」

「そうよねえ、イゲウル」

「だろう? 俺、ベルウル、フェズウル、エアリウルの順にこの剣を好きな箇所に刺せ。おっと、エアリウルはもちろん心臓な」

と、そんな話が聞こえてきたため目を覚ました。

気が付けば、石造りの神殿の中に浮かんでいた。
ガラスのない窓の外には海が広がり、灯りがないというのにこの部屋の中はなぜか明るかった。
室内にはすでに女が一人、男が二人おり、その全員の手には銀色の探検が握られている。
もちろんエアリウルの手にもあった。

そして三人の視線の先には石でできた椅子に項垂れて座る金髪の男がいた。
手足には枷がはめられ、その枷は椅子と一体化している。
つまり、その男は拘束されていた。

(ここは…)

なんだか何やら長い夢を見ていたような気がし、まだぼんやりとした頭をフル回転させた。

(確か、お父様が閉じ込められたところだ…)

イゲウル、ベルウル、フェズウル、エアリウルの四人は兄妹であり、オケアテスを父に、ラティスを母に持つ子供たちだ。

しかしラティスは過去に人間を殺めた経験があり、その事実をオケアテスや子供たちは知らなかった。

そのような中、オケアテスの臣下であるホワイトマザーが捕鯨をする人間に捕まりそうになり、彼は人間から自身の臣下を守った。
だがその際、不運にも船がひっくり返り船員たちは水死してしまう。
その事件の裁判が神の世界で行われたが、さらにラティスの罪も太陽神によって暴かれた。

ラティスは以前、人間の男と恋に落ち、男をサメに変え一緒に暮らしていたことがあった。

そんなある日、サメとなった男は人間に戻りたいと思い始めた。
海の中にいるためにはサメの姿でいるしかないが、その姿だとラティスと会話ができなかったのである。
日に日に強くなったその想いが効いたのか、男はサメの姿から人間の姿に戻ることができ陸に帰るためラティスの元から抜け出した。
それに気づいたラティスは逃げる男を追いかけたが、男はついに力尽き溺死してしまう。

しかもラティスは男の骨を本体に使い、弦にホワイトマザーの髭を使用してハープを生み出し生物と会話できる道具を作り上げた。
人間を拘束し姿も変え死なせ、あげくの果てには骨を利用したという罪を犯したラティスも裁判を受け、二人に審判が下された。

その結果、大罪を犯したラティスは泡となり海の藻屑と化し、オケアテスはその水死した人間全員が次の生を受けるまで海底神殿に監禁されることになった。

そして残された子供たちはラティスを罵倒し、オケアテスのことも憎むようになった。

罪人を両親に持つ子供たちは誰からも信用されなくなったのである。

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