対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
女性たちは人を探しているようで、ここに誰もいないことがわかるとすぐに出て行った。
扉が占められると、ほっとした恵巳は肩の力が抜けた。
「もう、大丈夫みたいですよ」
身体を放そうとすると、逆に拡樹の腕に力が入った。先ほどよりも近く、すっぽりと腕の中に体が収まる。
「もう少し、こうしていたいです」
耳もとでささやかれたしっとりとした声に、まばたきをも忘れる。戸惑った恵巳だが、ぎこちなくも背中に腕を回し、ジャケットの裾を掴む。
「あの3人の言い分を聞かれていたらどうしようかと思いました」
「まさか。婚約相手を置いて他の女性の言い分を聞こうとするはずありません。そんなの、男として失格です」
「優しいですね」
「僕は、ただ恵巳さんに自分のことを好きになってもらいたくて必死なだけですよ」
「え?」
「着替えをと思いましたが、ワインの染み、綺麗に落ちてますね。どうやったんですか」
気合と意地で落としたと答えると、恵巳さんらしいですね、と笑って手を引いた。
絡まり合う指。拡樹のペースに流されたままで、思考が追い付かない恵巳だが、こうして流されるのも悪くないと思い始めていた。
扉が占められると、ほっとした恵巳は肩の力が抜けた。
「もう、大丈夫みたいですよ」
身体を放そうとすると、逆に拡樹の腕に力が入った。先ほどよりも近く、すっぽりと腕の中に体が収まる。
「もう少し、こうしていたいです」
耳もとでささやかれたしっとりとした声に、まばたきをも忘れる。戸惑った恵巳だが、ぎこちなくも背中に腕を回し、ジャケットの裾を掴む。
「あの3人の言い分を聞かれていたらどうしようかと思いました」
「まさか。婚約相手を置いて他の女性の言い分を聞こうとするはずありません。そんなの、男として失格です」
「優しいですね」
「僕は、ただ恵巳さんに自分のことを好きになってもらいたくて必死なだけですよ」
「え?」
「着替えをと思いましたが、ワインの染み、綺麗に落ちてますね。どうやったんですか」
気合と意地で落としたと答えると、恵巳さんらしいですね、と笑って手を引いた。
絡まり合う指。拡樹のペースに流されたままで、思考が追い付かない恵巳だが、こうして流されるのも悪くないと思い始めていた。