対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
温かい手に導かれた先は、オープンデッキ。船が作り出す海の音とともにダイナミックな夜景は流れ、潮風が髪をなびかせる。
「わー、すごい綺麗!なんだかこの夜景を独り占めしてるみたいですね」
「喜んでもらえてよかったです」
遠くで風を切る音がしたかと思うと、色鮮やかな大きな花火が咲いた。
「わ、花火!?」
見上げた目を丸くして驚いている。そんな大きな瞳に、さらにいくつもの花火が映される。
「こうして花火が見られるのは今夜だけだそうですよ」
「そうなんですか?
花火なんて見るの、何年振りでしょう。働き出してからは、近くの夏祭りにも行かなくなってしまいましたから」
「大人だからこそ、こうして花火を見上げるのもいいものですね。もう秋ですし、今年は見納めですかね」
「そうですね。また来年も見られたらいいですよね」
うっとりしていたから、自分の発言の重さに気が付かない恵巳。
拡樹に聞き返されてからようやく我に返った。
「あ、いや、来年もっていうのは…、今日、楽しかったなって思って。だから…、深い意味はない、こともない、のかもしれませんが」
「そんなことを言われると、浮かれてしまいます」
そう言って照れる拡樹の姿に、どうしようもなく胸が締め付けられた。
いつか伊織が言っていたことを思い出す。家族になりたいと思うなんて、そのときはいまいちピンと来なかったが、今なら少しはわかる気がした。共に同じ未来を見たいと願うことなのではないかと。
「わー、すごい綺麗!なんだかこの夜景を独り占めしてるみたいですね」
「喜んでもらえてよかったです」
遠くで風を切る音がしたかと思うと、色鮮やかな大きな花火が咲いた。
「わ、花火!?」
見上げた目を丸くして驚いている。そんな大きな瞳に、さらにいくつもの花火が映される。
「こうして花火が見られるのは今夜だけだそうですよ」
「そうなんですか?
花火なんて見るの、何年振りでしょう。働き出してからは、近くの夏祭りにも行かなくなってしまいましたから」
「大人だからこそ、こうして花火を見上げるのもいいものですね。もう秋ですし、今年は見納めですかね」
「そうですね。また来年も見られたらいいですよね」
うっとりしていたから、自分の発言の重さに気が付かない恵巳。
拡樹に聞き返されてからようやく我に返った。
「あ、いや、来年もっていうのは…、今日、楽しかったなって思って。だから…、深い意味はない、こともない、のかもしれませんが」
「そんなことを言われると、浮かれてしまいます」
そう言って照れる拡樹の姿に、どうしようもなく胸が締め付けられた。
いつか伊織が言っていたことを思い出す。家族になりたいと思うなんて、そのときはいまいちピンと来なかったが、今なら少しはわかる気がした。共に同じ未来を見たいと願うことなのではないかと。