対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
14.座談会
「パパ知らない?朝から見当たらないの」

「お父さんなら今日は定例会でしょ。月に1回行ってるんだからいい加減覚えてよね」

「そうだったわね」

月に一度行われている定例会には、拡樹が館長をするような大手の博物館も、恵巳の父が館長をする小さな交流館も参加する会議。運営についてや、最近の動向について、話し合ったり話し合わなかったりしているという。

会議という名目だが座談会という色の方が強い。

「やぁ、拡樹君。今日の定例会には参加できたんだね」

「はい。いつも部下に任せていては申し訳ないので。
それにしても、なんだか騒がしくないですか?何かあったんですかね?」

「言われてみれば、向こうの方がうるさいな。今日もいつも通りの定例会だと聞いているが…」

会議室の外からいくつもの足音が聞こえてきた。

駆け込んできた青ざめた男の姿は、緊急事態を思わせた。

「今、宮園泰造さんが到着されました。今日の定例会に参加されるそうです」

「え?」

「なんだって!?」

一気に慌ただしくなる会議室。ゆっくりお茶でも飲もうという空気が一変し、急いで机の上にだされたお菓子を片付ける。

部下を引き連れてぞろぞろと会議室に入ってきた泰造。会議室に未だかつてない緊張が走る。

泰造は口を真一文字に結び、険しい表情で真ん中の席にどかりと座った。
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