対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「どうして君のお父さんがここに来るんだ?何しに来たんだ?」

「僕も今知りました。わざわざ来るなんて、何か特別な理由があるとしか思えません。この不吉な予感が当たらないと良いのですが…」

全員がかしこまって席に着く。司会を任された男性が、ちらちらと泰造の方を見ながら、恐る恐る口を開く。

「宮園さん、今日はどういったご用件で…?もしかして、息子さんの仕事っぷりを見に来られたとか?」

「そんなものに興味はない。

今日ここに来たのは小関さん。あなたに理事会での決定事項をお伝えしたかったからです。

うちからの融資を打ち切ります。

今度、新しく和歌を集めた博物館を設立する計画があり、小関さんのところに融資を続けるとなると、それなりの理由が必要になるんですが…。あなたは展示品をこちらに譲るつもりはないと仰っていましたね?

となると、こちらから融資するだけのメリットが見つからない」

いきなりの融資打ち切りの話。もちろん納得などできるはずがなかった。

「ま、待ってくれ。融資するかわりに、拡樹君とうちの娘が婚約したじゃないか。一蓮托生だろ」

「この話は全て白紙に戻すと言っているんです。拡樹のような出来損ないなど、お宅の娘さんにはふさわしくないでしょう。拡樹には、別の話が来ていますので、心配は無用です。

話は以上です」

「宮園さん、急にそんなこと言われても」

「理事会で決まったことです」

それ以上は何も言い返させない圧力でその場を押し込めた。
突然に突然が重なり、会議室はざわめきだした。
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