対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「父さん!」

車に乗り込もうとしている泰造を拡樹は追いかけて呼び止めた。

「…僕のせいですか」

「お前がここまで使えないとは思わなかった。少しでも家の役に立ちたいのなら、私の指示通りに動け。大手広告会社の社長の娘だ。来週会ってもらうから、空けておけよ」

それだけ言って車に乗り込んだ泰造。車は無情にも発進していった。

うなだれてどうすることもできずにいる拡樹を支えられる者は誰もいなかった。
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