対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
何度チャイムを鳴らしても、何度扉を叩いても全く音沙汰がない。
「宮園さん!いるんですよね!」
父から事情を聞いた恵巳は、真っ先に泰造に会いに来た。
騒いでいると、ようやく中から人が出てきた。燕尾服を着て、少しの笑顔も見せずに対応する。
「旦那様は今、取り込み中ですので」
「いるんですね、失礼します」
早口でそう言うと、執事の脇を潜り抜けて屋敷に侵入した。待ちなさいという声を背中に聞きながら、屋敷内に視線を走らせ、一直線に泰造のいるであろう部屋へと駆け込んだ。
運よく部屋に鍵はかかっておらず、仕事をしている様子の泰造は、書類から顔を上げることなく低い声で言った。
「乗り込んでくるなら、父親でも母親でもなく、あなただと思っていました。小関恵巳さん」
「どうして、こんなことするんですか」
「慈善事業ではないのですよ。収益の見込みがなければ切りますし、こちらに不利な状況になったら見捨てます。
それが、ビジネスです」
「本気ですべてを白紙に戻すおつもりですか」
「何度も同じことを言わせないでください。
君は、拡樹から何も聞いていないのか?」
突然拡樹の名前を出され、しかもその不穏な内容を感じさせる言い方に言葉が詰まった。
「宮園さん!いるんですよね!」
父から事情を聞いた恵巳は、真っ先に泰造に会いに来た。
騒いでいると、ようやく中から人が出てきた。燕尾服を着て、少しの笑顔も見せずに対応する。
「旦那様は今、取り込み中ですので」
「いるんですね、失礼します」
早口でそう言うと、執事の脇を潜り抜けて屋敷に侵入した。待ちなさいという声を背中に聞きながら、屋敷内に視線を走らせ、一直線に泰造のいるであろう部屋へと駆け込んだ。
運よく部屋に鍵はかかっておらず、仕事をしている様子の泰造は、書類から顔を上げることなく低い声で言った。
「乗り込んでくるなら、父親でも母親でもなく、あなただと思っていました。小関恵巳さん」
「どうして、こんなことするんですか」
「慈善事業ではないのですよ。収益の見込みがなければ切りますし、こちらに不利な状況になったら見捨てます。
それが、ビジネスです」
「本気ですべてを白紙に戻すおつもりですか」
「何度も同じことを言わせないでください。
君は、拡樹から何も聞いていないのか?」
突然拡樹の名前を出され、しかもその不穏な内容を感じさせる言い方に言葉が詰まった。