対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
どんなに着込んでいても、まだまだ冷たい空気が肌を刺す。だが、それだけではない賑やかさがこの場所には立ち込めていた。春の訪れを待ちわびる人々が、長い冬に別れを告げるイベント。
「かなり寒いんだけど。あっちに穴場があるらしいから行ってみるか。いやー花火とか久しぶりすぎてテンション上がるわ。めぐも花火なんか見る機会なかったろ?」
「あー…、うん。そうだね」
最初、行き先が花火大会だと聞いて足がすくんでいた。しかし、ここで行かないと拡樹のことをずっと引き摺っていることを突き付けられているようで嫌になった。
ここは、多少無理をしてでも行ってしまおうと意思を固めたのだった。
冬の澄み渡った空に打ちあがるという花火。湖に映る逆さ花火が魅力の1つだと言われている。
夏とはまた雰囲気が違い、屋内で鑑賞する人が多いのか、湖の周りを歩いていても、身動きがとれなくなるほど混んではいない。
なんとなく、湖から人並みの方にも目を移すと、向こうにある人影を捉えた。
高身長で気品ある佇まい、一度見たら忘れることのなさそうな端正な顔立ち。他に歩いている人はたくさんいるというのに、その人物から目が離せない。
思わず息を飲む。見間違いかと思ったが、その人物を心が捉えた時からおさまらない胸の高まりが、彼が宮園拡樹本人であることを告げていた。
「めぐ?」
心配そうな連の声が聞こえるが、反応できない。拡樹は1人で歩いていたわけではなく、隣には以前恵巳に赤ワインをかけた令嬢を連れていた。あの時のように、優越感に浸ったような笑みを向けている。
「かなり寒いんだけど。あっちに穴場があるらしいから行ってみるか。いやー花火とか久しぶりすぎてテンション上がるわ。めぐも花火なんか見る機会なかったろ?」
「あー…、うん。そうだね」
最初、行き先が花火大会だと聞いて足がすくんでいた。しかし、ここで行かないと拡樹のことをずっと引き摺っていることを突き付けられているようで嫌になった。
ここは、多少無理をしてでも行ってしまおうと意思を固めたのだった。
冬の澄み渡った空に打ちあがるという花火。湖に映る逆さ花火が魅力の1つだと言われている。
夏とはまた雰囲気が違い、屋内で鑑賞する人が多いのか、湖の周りを歩いていても、身動きがとれなくなるほど混んではいない。
なんとなく、湖から人並みの方にも目を移すと、向こうにある人影を捉えた。
高身長で気品ある佇まい、一度見たら忘れることのなさそうな端正な顔立ち。他に歩いている人はたくさんいるというのに、その人物から目が離せない。
思わず息を飲む。見間違いかと思ったが、その人物を心が捉えた時からおさまらない胸の高まりが、彼が宮園拡樹本人であることを告げていた。
「めぐ?」
心配そうな連の声が聞こえるが、反応できない。拡樹は1人で歩いていたわけではなく、隣には以前恵巳に赤ワインをかけた令嬢を連れていた。あの時のように、優越感に浸ったような笑みを向けている。