対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
呼吸が浅くなっていくのを感じながらも目が離せないでいると、蓮が恵巳の手を握った。
「やまやん?」
向こうから人混みをかき分けて近づいてくる。目が合ったらまずいと思うのに、やはり逸らすことなんてできない。
あの令嬢が隣にいるということは、それなりの関係ということなのだろうか。もう自分のことなんかすっかり忘れて、次の相手と仲良く出かけていると考えるだけで目眩がしそうだった。
その時、拡樹も、恵巳と蓮の存在を捉え、眉が少し上がった。その素を見たリアクションに、悲しくもないのに胸が締め付けられた。
すぐにでもこの場を逃げ出したいのに、体が言うことを聞かない。拡樹はすぐに顔を逸らし、通り過ぎようとした。
そんな拡樹の一挙手一投足に心が乱される。早く彼の視界から消えてしまいたい。
そんな恵巳の願いはあっけなく打ち砕かれた。拡樹の異変を素早く察知した令嬢が、恵巳の目の前で足を止めたのだった。その真っ赤な唇は、自信に満ち溢れていた。
「お久しぶりね。そちらもデートなの?
そういえば、自己紹介してなかったわね。高宮萌です。拡樹さんとは婚約関係にあります」
わざとらしく、婚約関係という言葉を強調させた。
「やまやん?」
向こうから人混みをかき分けて近づいてくる。目が合ったらまずいと思うのに、やはり逸らすことなんてできない。
あの令嬢が隣にいるということは、それなりの関係ということなのだろうか。もう自分のことなんかすっかり忘れて、次の相手と仲良く出かけていると考えるだけで目眩がしそうだった。
その時、拡樹も、恵巳と蓮の存在を捉え、眉が少し上がった。その素を見たリアクションに、悲しくもないのに胸が締め付けられた。
すぐにでもこの場を逃げ出したいのに、体が言うことを聞かない。拡樹はすぐに顔を逸らし、通り過ぎようとした。
そんな拡樹の一挙手一投足に心が乱される。早く彼の視界から消えてしまいたい。
そんな恵巳の願いはあっけなく打ち砕かれた。拡樹の異変を素早く察知した令嬢が、恵巳の目の前で足を止めたのだった。その真っ赤な唇は、自信に満ち溢れていた。
「お久しぶりね。そちらもデートなの?
そういえば、自己紹介してなかったわね。高宮萌です。拡樹さんとは婚約関係にあります」
わざとらしく、婚約関係という言葉を強調させた。